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#面白い本「すばらしい人体」(山本健人著・ダイヤモンド社)

久し振りのブックレビューです。今回は新刊書(といっても今年の夏に上梓された本ですが)をご紹介します。「すばらしい人体」は、医学を中心とした科学の面白さと驚きに満ちた本です。冒頭に掲げられた「医学はサイエンスに支えられたアートである(ウィリアム・オスラー)」の言葉そのものです。著者の山本氏は、2010年に京大医学部を卒業した若きドクターで、消化器外科や感染症専門医であり、同時に人気医療情報サイト「外科医の視点」を運営しています。

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人体という、最先端科学でも到底追いつくことが出来ない、精巧な創造物に対する純粋な驚きと好奇心が、文中からあふれ出してきます。人間の脚一本の重量は約10キロ、腕の重さは4~5キロあります。両手両足で約30キロ、体重60キロの人の約半分は手足の重量です。このような重たい部位を支える筋肉と骨の精巧な作り!私たちの手足が「重く」感じるのは、血行不良や腫れやむくみによるもので、日常生活で部位そのものの重さに閉口することはありません。

肛門の機能も恐るべきものです。尾籠な話ですが、便でも水溶物でもなく「おなら」だけを体外に放出するという機能は、固体と液体を遮断して気体だけを選別しているのです。便意をコントロールできるのも、便を自然に排出するための内肛門括約筋(不随意筋)の他に、便をとどめることが出来る外肛門括約筋(随意筋)があるからです。

医学の発展の歴史の中で、私は次のことを知りませんでした。「メンデルの法則」のメンデル(オーストリア)が修道士であったこと、ダーウィンが地質学者であったこと(これは何となく知っていた気がする)、口腔洗浄液の代名詞「リステリン」は、19世紀半ばにイギリスの外科医リスターが手術時に施した消毒に端を発していること(それまでは手術時に消毒という概念はなかった)、細菌の発見者がオランダの織物商人レーウェンフックであり、そして顕微鏡で細菌や細胞などを観察する際になされる”組織の染色”は、19世紀ヨーロッパの植民地貿易の拡大により、繊維産業が発展し、それに伴って布染色の技術とそのための化学染料の開発がすすんだことが背景にあること。以上のように、長い歴史の中では、さまざまな医学者以外の人が重要な役割を果たしているという事実。などなど。

人体は、頭からつま先に至るまで驚異に満ちており、それを読者に伝えることがこの本を上梓した目的だった、と著者はあとがきで述べています。何より著者本人が、臨床医として、ひとりひとりが異なる人体という奇跡の産物に日々向き合っているからこそ、こうした刺激的な本が誕生したのだと思いました。(T生)

 

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