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先週の新聞書評欄から(6)

日経新聞に目を通す機会が少ない方を対象に書評欄を眺めます。

今回は11月11日と18日の2週分をまとめて書きます。例によって書評委員による書評を2週分列挙します。「歴史としての大衆消費社会」(寺西重郎著・慶大出版会)「ケルト 再生の思想」(鶴岡真弓著・ちくま新書)、群馬大学病院の医療現場の荒廃を描いた「大学病院の奈落」(高梨ゆき子著・講談社)、アルジェリア人作家による未来小説「2084 世界の終わり」(サンサル著・中村佳子訳・河出書房新社)。以上11日分。

18日の掲載は、リチャード&ダニエル・サスカインド父子共著による「プロフェッショナルの未来」(小林啓倫訳・朝日新聞出版)中国人作家の警察小説「13・67」(陳浩基著・天野健太郎訳・文芸春秋)「粉飾決算vs会計基準」(細野祐二著・日経BP社)、メキシコ系アメリカ人(チカーノ)を文化人類学の視点でとらえた「ハーフ・ブリード」(今福龍太著・河出書房新社)。そして上記に採り上げなった2冊について、少し詳しく記します。

震美術論」(椹木野衣著・美術出版社)。地震が所与の条件である地域とそうでない地域を比較して論ずる。西欧諸国は押しなべて地震のない地盤に築かれた文明であるのに対し、日本はそうではない。地震と津波が頻発する地質的条件の下で培われた日本文明は、「忘却と反復」を自然なこととして受け入れる特性を持つ。そして日本美術の特色を「鎮魂と慰霊」とみる、等々。至極納得性の高い比較文化的論考だと感じました。東日本大震災が、このモチーフを著者にもたらしたそうですが、同じようなアプローチは、あらゆる視点から可能だと思いました。

ガレノス」(マターン著・澤井直訳・白水社)。トルコ、アナトリア西岸にあった古代ペルガモン王国で西暦129年に生まれた、古代最大の医学者ガレノスの物語。剣闘士の治療で腕を磨き、ローマに出て皇帝マルクス・アウレニアスの目に留まる。のちにローマで宮廷の侍医として仕えるとともに、身分を分け隔てすることなく広く治療にあたり、87歳ごろに没したと云われる。手術の腕がよかっただけでなく、脈・体温・血色・尿や便・汗などを観察して、内臓腫瘍をいいあてるほどだったという。即ち卓越した外科医であり、総合診療医であったわけです。古代医学というとヒポクラテスしか思いつかず、ガレノスという名前を知らなかったという不明も含め、歴史にはまだまだ魅力的なストーリーが残っているということを強く感じました。(ターサン)