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#面白い本 「二十世紀」橋本治著(1/2)

橋本治(1977-2019)は、二年半前に亡くなりました。まだ70歳、これからますます面白い作品を紡ぎだしてくれると期待していただけに、本当に惜しい人を亡くしたものです。いまから50年以上前、東大紛争の真っ盛りに「とめてくれるなおっかさん、背中のいちょうが泣いている、男東大どこへ行く」の駒場祭ポスターで注目を集め、小説家のデビュー作は「桃尻娘」。こうしたキャリアから、胡散臭いイメージをお持ちの方がいると思いますが、どっこい、小説・評論・エッセイと幅広く多くの話題作を生み出し、特に日本古典の現代語訳「桃尻語訳枕草子」「窯変源氏物語」「双調平家物語」などにおける、オーソドックスでしかも個性的な文業は、比類なきものだと思います。

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1968年東大駒場祭のポスター

さて、その橋本治が2001年に毎日新聞社から刊行した後、ちくま文庫で上下2巻に収められているのが「二十世紀」です。20世紀の約半分、1901年から1945年を扱う上巻の冒頭に「総論 二十世紀とはなんだったのか」という、文庫本サイズで50ページほどの文章が置かれ、あとは19世紀最後の年1900年から順に、各年5・6ページほどのコラムが続きます。総論を読んでみると、橋本の二十世紀の定義は「十九世紀を脱却するための百年」ということになります。二十世紀は、戦争の世紀と呼ばれていますが、米ソ冷戦は第二次世界大戦の遺物であり、第二次世界大戦勃発の要因には第一次世界大戦の後遺症があり、第一次世界大戦は、十九世紀的ヨーロッパ帝国主義国家間の確執から発生したのだから、二十世紀はまだ十九世紀の残滓を引きずっており、「20世紀は、実は19.9世紀だ」というわけです。(以降、次回)  (T生)

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