新宿駅を朝7:03発「特急かいじ」に乗り甲府駅へ、同じホームの後方からでる身延線に乗り換えて「身延駅」へ。
久遠寺(くおんじ)まではそこからバスやタクシーで15分ほど。
早起きした甲斐あって目的の宿坊へは10時前に着きました。
久遠寺の門前には20ほどの宿坊があり、そのうちのひとつの宿坊で開催されたお酒と能のイベントにお昼過ぎまで参加です。名物の「ゆば料理」をいただきながら、近郊のワイナリーや酒蔵、ビール醸造所からやってきた自慢の逸品のテイスティング。
食後に、能「猩々(しょうじょう)」を鑑賞しました。
中国 揚子江の畔で酒を売る親孝行な青年 高風(こうふう)のもとへ現れた酒好きの妖精「猩々」。二人は酒を酌み交わし、猩々は喜びの舞を舞い、酒の德をたたえ、この青年に汲んでも尽きない酒壺を与えます。その後、高風の家はますます栄えたというお話でした。
「足元は よろよろと 酔ひに臥したる枕の夢の 覚むると思へば 泉はそのまま 尽きせぬ宿こそ めでたけれ」
クライマックスの謡のこの部分「尽きせぬ宿」という表現に、長寿や財、また子孫繁栄への思いも込められているそうです。
今回「乱(みだれ)」の特殊演出が付き、これは緩急に変化する囃子の演奏にあわせ、通常の摺り足ではなく、爪先だちや足の蹴り上げによって、波間で戯れる猩々の足取りやほろ酔いで無邪気に舞遊ぶ様子をあらわす特別なもので見どころでした。
(ちなみにショウジョウバエの名前は、赤い目をしてお酒にやってくるからついた名前だそうです。)
観能のあとは、テイスティングでこちらもほろ酔いのその足で、久遠寺をお参りし、ロープウェイで標高1153メートルにある奥之院「思親閣」へ行ってみました。
全長およそ17キロメートル、高低差763メートルを7分間で運んでくれるロープウェイの眼下には、色づいた木々や、葉を落とし枝ぶりの美しさが際立つ枝垂桜、遠くに富士川の蛇行する様子ものぞめました。
日蓮聖人が房州小湊(千葉県鴨川市)のご両親を思って植えられたという杉の大木が両側にひかえる参道をあるき、わたしもしばし祖先と両親をおもったひとときでした。
奥之院には3ヶ所展望台があり、なかでも北側展望台からは早川渓谷と南アルプス、八ヶ岳連峰の南部分が大きく広がり、それはそれは雄大な眺めでした。
帰りのロープウェイでは、雪をたたえた富士山が雲間から現れ、身延山への訪れを祝福してくれているように感じました。
事務局:ふな