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能「葛城(かづらき)」

葛城山(大和葛城山)は大阪府と奈良県の境に位置し、かつては、南北に連なる金剛山と葛城山との総称として用いられていたようです。

日本書紀に描かれた神武天皇の東遷物語には、「手足が長く土蜘蛛のような住民を葛の蔓で網を作り捕らえた。これよりこの地をかづらきと呼ぶ」という一文があり、この地に土着の民が集落を形成していたことが窺えます。

時代はくだり、修験道の高祖 役行者(えんのぎょうじゃ)として知られる役小角(えんのおづめ)は葛城山の麓で生まれ(634-706伝)、この山で修行したと伝わります。役行者の数多い伝承のひとつに次のようなものがあります。

葛城山で修行し呪法を身に着けた役行者は、葛城山と金峯山の間に橋を架けさせようと葛城山の鬼たちに命じます。けれど、彼らは自分たちの顔が醜いので顔の見えない夜に作業するといいます。夜だけでは作業がなかなか進まず、怒った役行者は葛城の神を呼びだし呪縛し谷底へ置き去りにしました。

能「葛城(かづらき)」は、これらの故事をもとに作られたとされています。

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出羽国 羽黒山の山伏一行が葛城山を訪れたところ吹雪にあい、立ち往生していると、そこへ一人の女が通りがかります。女は山伏たちを気の毒に思い、一夜の宿にと自分の庵へ案内します。この山で採れる“楚樹(しもと)”と呼ばれる小枝を焚いて山伏をもてなし、葛城山と楚樹にまつわる話を語ります。やがて山伏が夜の勤行を始めると、女は身の苦しみを救ってほしいと告げ、自分は葛城の神であり、いにしえ役行者から修行者のための岩橋を架けよと言われたができなかった。そのため、役行者の法力により葛の蔦で縛られ苦しんでいるのだと明かし、消えていきます。

その夜、山伏たちが祈っていると、葛城明神が姿を現します。苦しみやつれた姿でしたが、天岩戸の昔を再現し、大和舞を舞います。やがて暁どき、女神は醜いわが身があらわになることを恥じて、岩戸のなかへ消えていくのでした。

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葛城明神が女神というのは、能の作者の創作と言われていますが、中世まで葛城山が高天原や天岩戸伝説の舞台と考えられていたようなので、天岩戸を再現する女神と結び付けたのかも知れません。

 能「葛城」は、冬の能ですが、ツツジの季節の大和葛城山(標高959メートル)は、山肌が写真のようにツツジの赤に染め上がるそうです。

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(事務局:ふな)