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能「高砂(たかさご)」

「高砂」は、能の代表的な演目として広く親しまれてきました。 高砂や この浦舟に 帆をあげて・・このフレーズなど「あ、あれね」と耳馴染みのあることでしょう。

兵庫県高砂市の高砂神社には、次のような伝説が残っています。神功皇后の命により国家鎮護のため大己貴命(おおなむちのみこと)を祀る神社として創建された高砂神社の境内に、黒松と赤松が一本の松から幹を分かって生じました。この松を大切にしていたところ、ある日、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冊尊(いざなみのみこと)が現れ、「今より神霊をこの木に宿し、世に夫婦の道を示さん」と告げられました。以来、人々はこの松を『相生(あいおい)の霊松』と呼ぶとともに、黒松には「伊弉諾尊 =尉(じょう)」が宿り、赤松には「伊弉冊尊=姥(うば) 」が宿るとして、祀るようになりました。

この伝説をもとにうたわれたと言われる『古今和歌集 仮名序』 にある 「たかさご すみのえのまつも あいおいの さまにおぼへ」 という一節を題材に、世阿弥(1363年~1443年伝)は、能「高砂」を作りました。

醍醐天皇(延喜帝)の御世のこと、九州阿蘇神社の神主 友成(ともなり)が、早春の都のぼりの道すがら、播磨国(兵庫県)の名所 高砂の浦に立ち寄ります。そこに、柔和な佇まいの一組の老夫婦があらわれました。

松の木陰を掃き清める老夫婦に、友成が高砂の松について問いかけると、この松こそが「高砂の松」であり、遠い住吉(大阪府)の地にある「住の江(墨の江)の松」と合わせて「相生(あいおい)の松」と呼ばれていると教えます。

そして『万葉集』の昔のように、今の延喜帝の治世に和歌の道が栄えていること(勅命によって『古今和歌集』が編纂されたこと)を、それぞれ高砂、住の江の松にたとえ、称賛します。

さらに、和歌が栄えるのは、万物に歌心がこもるからだと説き、常緑の松は特にめでたいとして、松の徳が君徳、歌徳と一体であると語ります。

そののち、自分たちは高砂と住吉の「相生の松」の化身であると告げ、住吉での再会を約束して夕波の寄せる岸辺から小舟に乗り、沖へと姿を消して行きました。

友成の一行も、にわかに吹きはじめた追い風と、月の出とともに船を出し、高砂の浦から住吉へ向かいます。

住吉の岸に着くと、神々しい姿の住吉明神が現れました。

月下の住吉明神は、颯爽と神舞を舞い、それは魔を払って福を招き、人々を慈しんで長寿をもたらす、恵みの舞でした。治まる御代、栄えゆく世の中、君と民の長寿を寿ぎ、天下の平安を祝福するのでした。

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能「高砂」 住吉明神:山井綱雄 撮影:辻井清一郎

千秋楽は 民を撫で 

万歳楽(まんざいらく)には 命を延ぶ

相生の松風 

颯々(さっさっ)の声ぞ楽しむ 

颯々の声ぞ楽しむ

長寿や夫婦の睦まじさを称えるとともに、松の常緑と長生を和歌の久しい繁栄になぞらえ、美しい言葉と、洗練された所作、舞により、傑出した作品を創り上げました。

崇高で清らかな雰囲気に満ちた、名曲中の名曲です。

 

事務局:ふな