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産経新聞の記事から『危機の外交』(新潮社)岡本 行夫著 

新現役ネット 関西支部で大変お世話になっているN氏より知らせていただきました。

記事を読みやすく文字化しました。

危機の外交


          

「左右、官僚組織と戦った男」

評:宮家 邦彦(外交評論家)産経新聞記事より

 我が師 (と勝手に思っている岡本行夫が逝って2年経った。彼の自伝『危機の外交』を一気に読んだ。岡本氏は特別な存在だから、涙なしには読めなかった。あれだけ長い間一緒に仕事をした「湾岸戦争」の部分でさえ、筆者の知らないことが山ほど書いてある。改めて、彼の偉大さを思い知らされた。

当初は英語での出版を考えていた。目的は「アメリカ人に湾岸戦争への日本の貢献とアメリカの日本に対する不当な扱いを知らせること」だったが、その日本語版は岡本行夫という不世出の外交官の肉声による「闘いの記録」になっている。

その一つが左右との闘いである。「俺は安全保障では右、歴史問題では左」が口癖だった。終戦の年に生まれ、米兵にチョコレートをもらった世代。筆者より一回り上の先輩だが、敗戦の反省と反米・親米の感情が入り交じっているのだろう。 安全保障問題では日米同盟の重要性を誰よりも理解していた。

「平和=非軍事」を信ずる戦後日本の空想的平和主義者たちと長年闘ってきた。他方、いわゆる「歴史問題」では一部保守系政治家・論客とも闘った。被害者と和解がない限り真の安全保障はないという信念があったからだろう。

もう一つ、岡本氏が終始闘ったのが官僚組織だった。詭弁を弄し責任逃れをする霞が関の「高級官僚」が大嫌いだった。

本書243Pにある「辞表」を岡本氏が認めた際、筆者は一人傍で見ていた。男が「責任を取る」とは、こういうことなのか。後日、退職の理由を聞いたら「俺が生きた証しを残したいから」と言われた。

確かに、こんな「器」の大きな男は霞が関では生息できない。退職後に岡本行夫氏の真の大活躍が始まるのは決して偶然ではないのだ。

本書を読んで、岡本氏の同世代には過去10年の人生を振り返ってほしい。若い世代には今後の日本のあり方を考えてほしい。最後に、特に若い現役官僚諸氏には「本当の官僚」とは何か、今何を目指し、何と闘うべきかを自問してほしい。 岡本氏の闘いはまだ道半ば。同盟の深化と相互理解は相当進んだが、近隣諸国との和解は次の世代の課題だからである。評・宮家邦彦(外交評論家)

 

新現役ネット 関西支部 T 岡本さんがテレビで見れないのはさみしい限りです。