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#パンデミックは歴史を変える?

 東京医科歯科大・東京外語大・東京工業大そして一橋大という4国立大学は、2001年に締結した連合憲章をもとに相互教育研究プログラムを実施していて、一般向けに定期的に文化講演会を開催しています。去る10月10日にも「環境・社会・人間」をテーマとした講演会があり、時節柄Zoomで聴講し大変勉強になりました。講演会の最後に登壇した東京医科歯科大の山岡教授は、ウィルス制御分野の専門家です。ウィルスが社会や人類に及ぼしてきた事例を、わかりやすく解説してくださいました。その一端をご報告しつつ、感想を述べたいと思います。

 

 「パンデミック」と呼ばれる疫病の世界的大流行は、紀元前430年、ペロポネソス戦争の頃に「アテナイの疫病」として記録されており、病名は不明ながら10万人もの命が奪われたとされています。その後の歴史と照らし合わせてみると、戦争による侵略や動乱などによる人の移動などが、パンデミックの引き金になることが多いようで、東ローマ帝国が地中海を制覇した6世紀半ばには、ペストにより2500万人が死亡、コロンブスが新大陸に上陸した大航海時代には、旧大陸から持ち込まれた天然痘や腸チフスなどにより、中南アメリカの原住民が最大7500万人も犠牲となり、第一次世界大戦時に大流行したスペイン風邪(死者は全世界で5000万人)は、参戦したアメリカ兵士が欧州に持ち込んだといわれています。

 山岡先生が示す年表を見て感じたことは、6世紀半ばのペスト大流行を境に古代ヨーロッパが中世に移り変わり、モンゴル帝国の大侵略とともにユーラシア大陸全般を覆ったペストの嵐が去ったあと、世の中はルネサンスに入るという風に、パンデミックが世の中の仕組みをすっかり変える契機ともなり、ある意味では文化の進展を後押ししたという事実でした。

 20世紀の後半以降、パンデミックを引き起こしたウィルス感染症は、例えばHIVやSARS、MERSなどがありますが、いずれもワクチンはなく、HIVを除いて有効とされる治療薬もない有様です。今回のコロナウィルス(SARS-CoV-2)に対しては、各国がワクチン開発に躍起になっており、どこかの大統領は、試験段階の薬で奇跡の復活を遂げた、と喧伝しています。

 コロナウィルスとの折り合い(with coronavirus)がどのあたりで決着するのか、全く予測がつきかねますが、私たちの周りで常態化しつつある「在宅勤務」や「リロケーション」または「オンラインコミュニケーション」といったワーキングスタイルをはじめとして、世界が社会モデルの新しい段階に足を踏入れることは確実な気がします。今までの歴史は、大局的には人類の進歩に貢献してきたと思いますが、これから築かれる文明が、これからの人類や地球に寄与するものになるよう、私たち一人一人もささやかながら参画していきたいと思います(T生)