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童謡「里の秋」驚きの変遷(1/2)

 毎週土曜日のお昼前、「子供たちに残したい美しい日本のうた」という番組が、BS朝日で放送されています。様々な日本の歌曲を、ナレーションで紹介しつつ聴かせるというシンプルな構成ですが、たまにチャンネルを合わせたときは、思わず聴き入ってしまいます。先日の同番組で紹介された「里の秋」。みなさんご存じのこの童謡が誕生するに際して、戦中戦後の社会情勢を反映した驚くべき事情があることを初めて知りました。同番組の説明を換骨奪胎して記します。すでにご存じの方、同番組をご覧になった方は読み飛ばしてください。

 「里の秋」は、当時小学校教師であった斉藤信夫の作詞、すでに著名な作曲家であった海沼實の作曲からなる作品です。

  静かな静かな 里の秋

  お背戸に木の実が 落ちる夜は

  ああ 母さんとただ二人

  栗の実煮てます いろりばた

素朴で哀愁に満ちたこの歌は、だれでも口ずさむことができるでしょう。「母さんとただ二人」とあるので、お父さんはそこにはいないことがわかります。母子家庭なのでしょうか?二番を見てみましょう。

  明るい明るい 星の空

  鳴き鳴き夜鴨の 渡る夜は

  ああ 父さんのあの笑顔

  栗の実食べては 思い出す

一番と風景は同じ。父さんは登場しますが、出稼ぎにでも行っているのか、それとももう亡くなっているのか、判然としません。ここで、全てが明らかとなる三番が登場します。

  さよならさよなら 椰子の島

  お舟にゆられて 帰られる

  ああ 父さんよ御無事でと

  今夜も母さんと 祈ります

この三番の歌詞は、急遽付け加えられました。そして「里の秋」は、1945年「外地引揚同胞激励の午后」というラジオ番組で、有名な少女歌手川田正子によって初めて歌われました。異様な感動を巻き起こしたこの曲は、引き続き「復員だより」のテーマ曲となり、世の中に広まっていくのです。

「里の秋」が、主に南方からの復員者を慰労する曲であったことを、私は初めて知りました。この作品の雰囲気を忠実に映像化した、倍賞千恵子の素晴らしい歌唱をYoutubeで聴くことができます。ぜひお試しください。(Youtubeで「里の秋 倍賞千恵子」で検索)

 そして作詞者斉藤信夫と「里の秋」には、さらに遡っての物語が存在します。以降は稿を改めてお話しします。(T生)