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能「道成寺(どうじょうじ)」

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今回の能は、「道成寺」を取り上げました。

ご在宅のひと時、お目通しいただければ幸いです。

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和歌山県日高郡にある天台宗の古刹「道成寺」には、「安珍清姫(あんちんきよひめ)伝説」と呼ばれる次のような物語が語り継がれています。

延長6年(929)、奥州の修行僧 安珍(あんちん)が熊野詣(くまのもうで)に出かけた時のこと、真砂まで来たところで庄司の娘 清姫(きよひめ)と出会います。清姫は美男の安珍を一目で気に入り求婚します。安珍は熊野から帰ってきたら結ばれようと約束し、修行へ向かっていきました。

待ちわびる清姫をよそに、安珍はそのまま帰ってしまいます。居ても立っても居られない清姫は恋心のままに安珍を探しにいき、やっとの思いで追いつくのですが、安珍は人違いだと言って逃げていきます。怒りにふるえ追いかける清姫に、日高川を船で渡って逃げる安珍、怒り一念の清姫は大蛇となって川を渡っていきました。

安珍は道成寺に逃げ込み、釣り鐘の中に隠れます。追ってきた大蛇は、その長い胴体を鐘に巻き付け、口から火をはき、終には、鐘もろとも安珍を焼き殺してしまいました。あとに残った大蛇も日高川に入水し消えていきました。

住持は二人が蛇道に転生した夢を見ます。法華経供養を営むと、安珍と清姫が天人の姿で現れ、熊野権現と観音菩薩の化身だった事を明かすのでした。

 

 能「道成寺」は、この悲哀物語の ”後日談” として作られました。

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春爛漫の道成寺、この寺ではある事情から、長らく釣り鐘が失われたままとなっています。

その鐘がようやく再造され、今日は新しい釣り鐘の供養が行われる日です。住職は寺男たちに「法要の場へ女は絶対に入れてはならぬ」と触れを出します。

そこへ一人の白拍子(しらびょうし)の女がやってきて、是非とも供養の舞を舞わせてほしいと頼みます。寺男は断りきれずに女を入れてしまいました。

供養の場へ入り込んだ白拍子は、見事な舞を舞いながら次第しだいに鐘に近づきます。そして到頭けたたましい音とともに釣り鐘を落とし、鐘の中に入ってしまいました。

騒ぎを聞いてかけつけた住職は、道成寺の鐘にまつわる恐ろしい話を語り始めます。それは、恋した男への執心のあまり大蛇となった女の物語でした。大蛇は、釣り鐘に隠れた男を、恨みの炎で鐘もろとも焼き殺してしまったというのです。驚きおののいた僧たちは皆で祈祷し、釣り鐘を引き上げます。

すると鐘の中から蛇体となった女が現れ、大蛇は鐘を焼くその炎でみずからの身を焼き尽くし、日高川の底深くへと姿を消していきました。

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能「道成寺」は、若手能楽師の登竜門と言われる重要な曲です。そのため、能楽師のプロフィールには、「道成寺」を披いた(最初に演じた)年がよく記されています。

また、能楽堂には舞台の ”天井” と ”むかって右奥の柱したほど” の2箇所に金属性の輪っかが取り付けられていて、これは道成寺の釣り鐘を吊るすためだけの金具です。

白拍子が鐘の中にはいるタイミングに合わせ、吊るされた約70キロの鐘が舞台上に落とされる「鐘入り」と呼ばれるシーンは、うまくタイミングを合わせないと大怪我につながりかねない緊張する場面です。落とされた狭い鐘の中で、能楽師は次の場面にあわせ、装束、髪型、面の付け替えを一人で行うのです。

 

道成寺縁起「安珍清姫伝説」は、能の他にも「道成寺物」として歌舞伎や文楽の演目に多く取り入れられています。

大蛇になってしまうほどの一途な恋心、、哀しくも純粋な気持ちに触れた思いになります。新型コロナが収束した暁には、道成寺に行ってみたいと思いました。

 

(事務局:ふな)