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キネマスキーの<たかが映画、されど映画>(その20) 日本映画の熱量不足 ―キネマ旬報年間ベストテンに思うことー

先日、我が<映画サロン>のご常連に誘われてキネマ旬報年間ベストテンの発表会に行ってきた。
 
前日の米アカデミー賞での「パラサイト」の圧勝に大感動した直後だけに、日本映画の今に心うそ寒い思いに捉われた。
邦画NO.1にランクされた「火口のふたり」にしても、現代の若者を取り巻く逼塞感を突き抜けるような爽快な後味と主演のふたりの役者の健闘ぶりは認めるにしても、往時の日活ロマンポルノの秀作たちには及びもつかない健康的なポルノ映画だ。「それがどうした」という欠落感を否めない。
それに比べて、文化映画第一位のドキュメンタリー「i 新聞記者」の世を恐れぬ映画的主張には感服。望月記者の至極まっとうな記者魂と足を惜しまぬ行動力の訴えるところは、思いがけない大ブレイク作「新聞記者」も及ばない。
 
洋画部門第一位は私が前号で予想した通りの「ジョーカー」
ホアキン・フェニックスの壮絶な怪演はもとより、一介のピエロを悪のカリスマに変貌させた現代の格差社会のありようは大傑作「パラサイト」のモチーフにもつながり、作り手の映画的意志に心捉われる。
(日本の格差社会に想を発する「万引き家族」の予定調和的なつまらなさこそ、今の日本映画界の熱量不足を物語っていよう。)
 
キネマ旬報のイベントで9時間以上座りっぱなしのせいか、背中の筋肉挫傷でコルセット着用を強いられ、寄る年波を実感させられている身としては、ポン・ジュノ監督を凌駕する映画作家(白石和彌監督あたりに期待)の出現を心待ちにしたい。 

 

<キネマスキーのプロフィール>

年齢・国籍不詳。「単館荒らしのキネマスキー」を自称し、余り世上に上らぬマイナーでおタクな映画世界の徘徊者。8年ほど前から、NPO法人新現役ネットの映画講座「シネマの迷宮」を主宰。

 

*新現役ネット映画サロン<シネマの迷宮 この映画知ってる?>

 日時:毎月第一土曜日 13:30~

 場所:NPO法人新現役ネット田町会議室(JR田町駅 三田口至近)

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