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キネマスキーの<たかが映画 されど映画>(その18)国家権力の闇に挑むジャーナリズム -映画「新聞記者」製作陣に拍手!-  

たわみ切った日本映画界にあって、久し振りに硬質な政治映画に出会った。

官邸、内閣調査情報室、公安などの権力機構によるネットを使っての世論誘導に挑戦する果敢なジャーナリズムの姿を、社会正義を求める女性記者と正義と職責のはざまで葛藤する若きエリート官僚のせめぎあいを通じて描いた政治サスペンス「新聞記者」である。

最近のアメリカ映画には、「スポットライト」、「ペンタゴンペーパーズ」、「バイス」といった政治批判映画の秀作がある。ただ、これらの作品が過去の政治スキャンダルに材を得ているのに対し、「新聞記者」は、「総理のご意向」忖度の加計学園問題と前川元文科省次官の辞任騒ぎや、官邸べったりのジャーナリストのレイプ疑惑もみ消しといった現下の政治的な出来事を想起させる。

独り勝ち政権下の今、国家権力の闇とも思えるこういった題材を取り上げた製作陣の蛮勇には敬意を表したい。製作陣のスタッフ、キャストなどの起用方法にも表に現れない悩みと苦労があったに違いない。

ただ、映画の出来具合についてはいささか不満もある。

上記のアメリカ映画には、スポーツを観るような爽快感やエンタテインメント性が映画としての成功を支えていたが、「新聞記者」の「生真面目さ」がどこか映画としての「つまらなさ」を生じさせているような気がしてならない。

これは今の日本の政治風土にも相通じることで、日本のリベラルが真面目であればある程、一般大衆にはつまらなく映るのではないか。トランプ米大統領のネットを駆使してのバカバカしい程乱暴な政治的所作に象徴されるような「面白さ」が日本のリベラル勢に欠けているのではないか。

この作品を通じて図らずも今様の日本人の政治的メンタリティに思い至ったことは、「新聞記者」の映画性自体が示す政治的時宜性の裏付けなのかもしれない。

 

<キネマスキーのプロフィール>

年齢・国籍不詳。「単館荒らしのキネマスキー」を自称し、余り世上に上らぬマイナーでおタクな映画世界の徘徊者。7年ほど前から、NPO法人新現役ネットの映画講座「シネマの迷宮」を主宰。

 

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