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キネマスキーの<たかが映画、されど映画>(その14)「老いること」の切なさ ー「ぼけますから、よろしくお願いします」を観てー

心に迫る秀逸なドキュメンタリー映画に出会った。

女流ドキュメンタリー作家信友直子さん監督・撮影・語りの「ぼけますから、よろしくお願いします」である。

 全国数館の単館上演が、またたく間にドキュメンタリーにはまれな大ヒットとなり、現在は全国70館以上でのロングランとなっている。

信友さんは、広島県呉市に住む98歳の父親と89歳の母親のここ四年ほどの日々に向けて、一人娘としてまた冷徹なドキュメンタリー制作者としてひたすらカメラを回し続けた。

腰が曲がって歩行もおぼつかない父親とアルツハイマー型認知症を発症した母親とがお互いを支えながら過ごす毎日は、人が「老いる」ことの愛おしさと切なさに満ち、たまに帰省する娘がこれを見守る優しさと相まって、観る人の心に沁み渡る。

 「男子厨房に入らず」を広言する昔気質の父親が、老妻の認知症進行に接し、炊事、洗濯、掃除、繕い物、買い物、ゴミ出しなど、家事のすべてを笑顔で引き受ける。東京で暮らす娘には、「かあさんのことは全部自分がなんとかするから、お前は東京で一生懸命仕事をしなさい。」と言い切る。この父親のなんとカッコいいことか。

 家族の不幸を転機として互いの絆をより深めあうこの三人の親娘のあり様が、私自らの晩節に向けてのエールとも感じられ、人生100年の今、他人事ではない示唆を内包するシニア必見の秀作であろう。

 

 <キネマスキーのプロフィール>
年齢・国籍不明。「単館荒らしのキネマスキー」を自称し、あまり世上の上らぬマイナーでオタクな映画世界の徘徊者。7年ほど前から、NPO法人新現役ネットの映画講座「シネマの迷宮」を主宰。


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