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キネマスキーの<たかが映画 されど映画> (その11)-今年の米国アカデミー賞に思うことー

今年の米国映画アカデミー賞は、大方の予想通り、作品賞は「シェイプ オブ ウォーター」、監督賞もこの映画を創ったギルレモ・デル・トロが受賞した。
機密研究所に囚われた半魚人と清掃員の女性の心の通い合いを描いたこのファンタジー映画の受賞にはまったく異論なく、このメキシコ出身の映画作家の類いまれな独創性に拍手を送りたい。
また、長編アニメ賞受賞のピクサー製作「リメンバー・ミー」も、メキシコの陽気な「死者の世界」を舞台に家族の絆を明るく描き、子供も大人も存分に楽しめる良質なアニメに仕上がった。

今回に限らず、ここ数年、アルハンドロ・イニャリトゥ、アルフォンソ・キュアロンといったメキシコ出身の映画監督がオスカー争奪戦を席巻しており、「メキシコ国境の壁」に象徴されるトランプ政権の移民政策改革へのアメリカ映画界のリベラルな反意が感じ取られる。

かつて、昭和の高度経済成長下での逼塞的状況の中から、現実破壊に映画的ロマンを求めた仁侠映画路線や性を切り口に人間解放を唱えた日活ロマンポルノが生まれ、若い映画ファンの心を捉えた時代があった。
テレビドラマの焼き直しやアニメの安直な実写映画化や体制迎合的な愚作からは、観る者の心を解き放つような映画的恍惚は生まれようがない。
日本映画界にも既成の価値観や旧守意識を打ち破る新しい作り手が出現することを期待したい。

 

<キネマスキーのプロフィル>
年齢・国籍不詳。「単館荒らしのキネマスキー」を自称し、余り世上に上らぬマイナーでオタクな映画世界の徘徊者。7年ほど前から、NPO法人「新現役ネット」の映画講座「シネマの迷宮」を主宰。
*新現役ネット映画サロン「シネマの迷宮 この映画知ってる?」
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