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先週の新聞書評欄から(4)

日経新聞に目を通す機会が少ない方を対象に、10月28日(土)の書評欄を眺めます。

書評委員による長文書評は5本。「中国『絶望』家族」(メイ・フォン著 小谷まさ代訳 草思社)、「ボージャングルを待ちながら」(ブルドー著 金子ゆき子訳 集英社)、「舞台の上のジャポニズム」(馬渕明子著 NHK出版)、「健康格差」(マーモット著 栗林寛幸監訳 日本評論社)、「トラクターの世界史」(藤原辰史著 中公新書)。題名からは内容の想像がつきにくい幾つかを紹介します。

「中国『絶望』家族」は、中国系女性ジャーナリストが、2016年まで続いた中国の一人っ子政策の矛盾を分析した書。「結婚できない男」「住宅ローン奴隷」「ニート」など、現代中国の多くの社会問題は、一人っ子政策と深く関係している、と説きます。「ポージャングルを待ちながら」は、フランスのオプティミスト夫婦のお話。「ポージャングル」は、ニーナ・シモンの歌「ミスター・ポージャングル」に由来。その他、わが国では国勢調査と呼ばれている人口静態調査(センサス)をテーマに、東アジア諸国の実情を浮かび上がらせた「東アジアの社会大変動」(末廣・大泉編著 名大出版会)など、興味を惹くいくつかの書籍が紹介されていますが、今回採り上げたいのは、見開きの紙面の両端に配されたエッセイ「半歩遅れの読書術」と「あとがきのあと」(新著者紹介)の内容についてです。

「半歩遅れ…」の寄稿者は宇宙物理学者の須藤靖氏。採り上げられた本は、アイザック・アシモフのSF小説「夜来る」です。このあまりにも有名な作品、ご存じの方も多いことでしょう。6つの太陽に絶えず照らされている架空の惑星ラガッシュには「夜」がありません。しかし2000年に一度、皆既日食によって1時間だけ夜が訪れます。何世代にもわたって夜を経験していないラガッシュの住人が目にする、暗黒と満天の星のきらめき。その時の彼らの呟きは「我々は何も知らなかった」。世界に潜んでいる不思議さを、当たり前と錯覚しない感受性と柔軟な思考。こうした大切なメッセージを、1941年に投げかけたアシモフに須藤氏は魅せられ、講演の都度このエピソードを引用しているそうです。

「あとがきのあと」で採り上げられているのは「新しい分かり方」(中央公論新社)と著者の佐藤雅彦氏です。佐藤氏はCMプランナーを経て現在東京藝大教授。「新しい…」は、60余の作品と随筆で構成されているそうです。この本のテーマは、私たちが何かを「どのように分かるか」ということです。1から5の五つの印刷された数字を頭に叩き込んだ後に、4が欠けた空間を指で押さえて1・2・3・5と読むと、指の下には4が隠れていると「抗いがたく」私たちは認識するそうです。こうした誤認識も含め、分かるとは「前の自分を抱合しつつ自分が拡大すること」と、佐藤氏は述べます。「『分かった!』といううれしさは、生きててよかったといううれしさです。」

アシモフの「ラガッシュ」における未体験に対する謙虚さと柔軟さ。「新しい…」で語られる、「分かる」という体験への喜び。いずれも同じことの表裏であるような気がします。世の中には、まだまだ知らないこと、体験していないことが満ち溢れていて、そうしたことを受け入れウキウキする感受性は、生涯にわたって持ちたいものです。今回は長文になってしまいました。(ターサン)