日経新聞に目を通す機会が少ない方を対象に、10月21日(土)の書評欄を眺めます。
書評委員による書籍紹介は5本。列挙してみます。「日本経済の歴史1~3」(深尾京司他編 岩波書店)「銀河鉄道の父」(門井慶喜著 講談社)「ゴッホの耳」(マーフィー著/山田美明訳 早川書房)「遺族外来」(大西秀樹著 河出書房新社)「ロンドン大火」(大橋竜太著 原書房)。題名から推測できるように、今週は人文科学系の本がずらりと採り挙げられています。(「遺族外来」は、ひたすら傾聴で遺族に寄り添うメンタルケアドクターの話です)
書評の横に「あとがきのあと」という著者紹介のコーナーがあり、「トップスケーターのすごさがわかるフィギュアスケート」(ポプラ新書)を著した、ご本人もトップスケーターだった中野友加里さんのとても面白い取材記事が載っています。フィギュアスケーターのフィジカルやメンタルの裏側、素人には理解不能と思われる採点基準のロジカルな仕組みなど、ピョンチャン冬季五輪を控え「さらに観戦が楽しくなる」本なのだろうなあ、と期待が膨らみます。
「リーダーの本棚」という、如何にも日経らしいインタビューコラムもあり、今回のゲストは東洋紡社長の楢原誠慈さん。九州電力から東洋紡に移って社長に昇り詰めた経歴、「私の履歴書」に載せても面白そうなビジネス上のエピソードにまじえて語られる様々な本との出会い。かつて経営者の必読書とされた「徳川家康」(山岡荘八)は兎も角として、「チーズはどこへ消えた」「経営の哲学」といったマーケティング関連の話題書と、フリーマントル、フォレットといったサスペンス作家の作品に惹かれるという氏の嗜好は、私の読書傾向とぴったりで、自分勝手に同好の士を得た気にもなろうというものです。ケン・フォレットは「針の眼」が有名で、楢原氏は「鷲の翼に乗って」(集英社文庫)を挙げていますが、私はいま大作「凍てつく世界」(SB文庫)を読んでいます。二次世界大戦前後の米・独・英国を舞台とした、スケールの大きなロマンサスペンスです。(ターサン)