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先週の新聞書評欄から(2の2)

10月14日(土)の日経新聞書評欄の続きです。従って正確には「先々週の書評欄から」となります。

前回、「それほど頻繁に取り上げられるジャンルではない『音楽』に関係した書籍が2本あるという、これも珍しい構成となりました」として、「ホワイトハウスのピアニスト」(クリフ著・松村哲哉訳・白水社)を採り上げましたが、もうひとつの書評「魅了されたニューロン」(ブーレーズ他著・笠羽映子訳・法大出版局)について書いてみます。

まずタイトルから推測されるように(ニューロン=神経細胞)、この本のテーマは、音楽作品や演奏ではありません。「作曲家や指揮者が音楽を生み出す時、その頭の中では何が起きているのか」という課題を、作曲家・指揮者・教育者であるP・ブーレーズと神経生物学者のJ=P・シャンジュー、作曲家のP・マヌリの鼎談を通して解き明かそうという、何か途轍もなく難解そうな一冊です。音楽愛好家はもとより、科学に興味を持つ人にも大いに向いた本かもしれません。望月京(作曲家)の書評を読むと、作曲(特に交響曲などのクラシック作品)という、イメージを論理的に楽譜に積み上げていく、膨大な「演繹的手法」の概念や課程などについて語られているようです。

年下の神経学者や作曲家を相手に語るブーレーズは、当時90歳を目前とした最晩年。世の中には時として”万能の天才”が現れるものですが、ブーレーズはまさにそうした一人でしょう。たとえ音楽の道を行かなくても超一流の知識人であったであろうブーレーズが中心となってすすめられるこの知的会話、CDとなった数多くのブーレーズ作品や、彼の指揮した曲を聴きながら味わうのも一興かもしれません。(ターサン)