新現役!シニアわくわくブログ

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#素敵な「人生相談」

週末の新聞各紙には、本紙のほかに別紙(第2部)がつきます。私が購読している日経新聞にも第2部があり、土曜日版に掲載される人生相談(「なやみのとびら」)を、私は毎回楽しみに読みます。回答者が美村里江さんの回は特に。美村さんは、嘗てミムラという芸名でした。約20年前のデビュー以来、決して派手ではないけど、着実なキャリアを積み重ねている美しい女優です。その彼女の回答ぶりが、誠実でやさしくて、ユニークでありながら説得力がある、そんな毎回感心させられる内容なので、読んでいるこちらの心も癒されることがあります。

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10月30日の相談内容は、10代女性から「小学生の頃は大好きだった父だが、最近不快に感じることが多い、思春期だからしょうがない?また父が好きになれるでしょうか」というものでした。余りにありふれた内容で、先日問題になった某ワイドショーのような、やらせ質問でないことを祈りますが、さて皆さんは、これにどう応えるでしょうか?

美村さんはまず褒めます。「いい娘さんですねぇ。客観的な視点もあり、思いやりも感じます」と。そして「お父さんが嫌いになる思春期」について、ホルモンの変動から説明していきます。思春期のイライラは、ホルモンの分泌量が安定すれば落ち着くので安心してください。ここまではごく普通の説明ですね。そのあと、思春期におけるホルモン分泌に関して、最近の学説を説明します。いわゆるインセスト・タブー、近親相姦のリスク回避のため、兄や父といった家族内異性の香りや言動を嫌避するようになっているそうだと。だからあなたは正常です。近親結婚を繰り返して衰退した名家があるから、世界史の授業で出てきたら調べてみたら、などと。

さらに、思春期という生物学的な時期を過ぎ、女性が大人になった時、お父さんと気が合わないこともあり得る。それは人間同士の相性の問題だから、独立した大人として快適と思われる距離感を探ることも大切。以上が彼女の回答概要です。

すばらしい回答だと思いました。相談者に寄り添いつつ、彼女が客観的視野や思考を持つように誘導していくやり方が見事です。人生相談とは、相談者が投げかける素材に回答者がどう向き合うか、実は回答者の資質や人生観が試されている場面なのですね。(T生)

 

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#面白い本 「芸と道」(松岡正剛著・角川ソフィア文庫)

~「千夜千冊」を大幅加筆修正した「千夜千冊エディション」の中の一冊~

世の中に「知の巨人」と称される人たちがいます。古くは熊方南楠、先ごろ亡くなった立花隆もそう云われていたと思います。現存する日本人の中の「知の巨人」候補の筆頭は、松岡正剛ではないかと私は前々から思っています。松岡の肩書に「編集工学研究所所長」があり、彼のホームグラウンドは書籍をベースとした編集工学です。書籍をベースにした彼の守備範囲は膨大で、その成果の一端が、1700冊以上の古今東西の書籍を網羅したブックレビューアンソロジー「千夜千冊」です。

角川ソフィア文庫から出ている「千夜千冊エディション」は、「千夜千冊」を再構成したシリーズで、ずいぶん手に取りやすく読みやすくなっていますが、各冊平均400ページの読みごたえがある文庫本です。今回ご紹介する「芸と道」は、芸をモチーフとした研究書・論文・小説・エッセイ・芸談・自伝などを幅広く扱っています。シリーズの中から、どのページを開きどの記述から読み始めてもいい、比較的気楽な一冊を選んでみました。

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「知の巨人」の膨大な領域の中でも、「芸」は松岡の得意分野です。彼は1944年、京都の呉服屋(本人は悉皆屋という古風な言い方をしています)に生まれ、父親は戦後、苦労の中で亡くなったようですが、いわゆる「旦那衆」に属する粋人でした。その父の影響を、松岡は隠すことなく有吉佐和子「一の糸」や武智鉄二・中村雀右衛門を語るくだりで、懐かし気なエピソードとして披露しています。そうかと思えば林屋辰三郎「歌舞伎以前」(岩波新書)を称賛する記述内容の濃さは、ほぼ研究者の目線です。

この本では、「寄席や役者や」の章で、桂文楽や米朝、森繁久彌、伴淳(伴淳三郎)、三木のり平、山崎努などが採り挙げられています。「芸の本質を射抜く達人」とも、「レベルの高いディレッタント」とも見られがちな松岡が、私たちと同じように「ファン」としての素直な側面を持っていることが、特に森繁の項に現れていてちょっと嬉しくなります。しかし関西落語復興の祖で、晩年は文化勲章を受ける桂米朝に対し「残念ながら落語は名人とはいえない」という、鋭い一言も忘れてはいません。

父親が持つ”旦那の目利き”から受け継いだコア・コンピタンスは、浄瑠璃と豊後節だそうですが、そこからパンクロックにまで領域拡大した懐の深さは、やはり知の巨人の一端を示すものなのでしょう。(T生)

#おしえて!イチロー先生

 日米のプロ野球ともに最終盤にかかっています。アメリカ大リーグでは、これからワールドシリーズという名の大リーグ優勝決定戦。日本ではヤクルト・スワローズがセントラル・リーグの優勝を決めました。しかし何といっても、日米プロ野球共通のナンバーワンニュースは、”ショーヘー・オータニ”の二刀流が本格的に開花したことだと思います。大谷選手はシーズンを終えて、今年の成績が今後のベースになると思う、と云っています。怪我無く、また怪我させられることなく数年プレーが出来れば、いったいどんなキャリアが築かれていることか。未知との遭遇、に似たワクワク感がありますね。

 さて大谷選手の前のレジェンドは、イチロー選手でした。走攻守いずれもが大リーグのトップクラスである日本選手など、少し前までいったい誰が想像したことでしょう?

イチロー氏は現役引退後、マリナースで後進を指導し、日本では多方面でエンタテナーぶりを発揮しています。そのイチローさんが、いろいろな話をしている動画が、SMBC日興証券のサイトから見ることができます。いくつかあるのですが、下記の「おしえて!イチロー先生」では、教室で「イチロー先生」が、それぞれこども(1限の授業)とおとな(2限の授業)の質問に答えています。こどもからは「どうして子供は早く寝なければいけないの」「お年玉を親に取られない方法」「リレー選手に選ばれるには」といった、それぞれ”切実な”質問が、おとなからは「暴飲暴食をした経験は?」「いつも前向きでいなければいけないのか」「老いをどう思うか」といった多岐にわたる質問が。。。

それを、あるときは軽妙に、またあるときは深堀りしつつ対応しているイチロー先生は、大リーグのグラウンドで縦横無尽に動きまわっている姿、そのものでした。(T生)

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