新現役!シニアわくわくブログ

シニアに役立つ情報や新現役ネットの活動について発信していきます。

九十歳(卒寿)の先輩方から学ぶこと

先日、長年新現役ネットの活動にご賛同いただき、多くのイベントに参加して下さるイマムラさんが、90歳を迎えられました。私はお会いして10年ほどになりますが、全くお変わりがない元気さを保たれています。元エンジニアであり、リモートアプリも使いこなされていますが、何といっても講演やセミナー、屋外で行われるイベントなどに、直接足を運んで楽しまれるのがお好きです。好奇心も旺盛で、美味しい店に行くこと、映画や音楽を鑑賞することが大好きで、宝塚歌劇などにも年に1・2回は劇場でご覧になります。そして観賞後、はっきりとご自分の感想を述べられるのもご立派だと思います。コロナ禍に伴う緊急事態が緩和されるにつれ、イマムラさんの活動範囲も徐々に拡がっていくことでしょう。

これも先日、10月のお誕生日で90歳を迎えられるピアニスト、高野燿子さんの演奏とお話を伺う機会を得ました。立ち居振舞い、演奏の正確さ、お話しぶりなど、ご本人がもうすぐ90歳と仰らなければ全くわからず、せいぜい80歳くらいにしか見えない若さです。「90歳って、ちょっとかっこいいじゃない!」さらりと仰って、温かい笑いを誘っていました。高野さんの御尊父は洋画家。幼年期をパリで過ごし、戦争のため、8歳ごろに引揚船で初めて日本の地を踏んだそうです。同じ船には藤田嗣治夫妻も乗っていました。日本に来て一番目についたのが、道を歩く人々の姿勢の悪さでした。肩を落として、背を丸めて、下を向いて。こんな姿勢には絶対ならない、と心に誓い、以来背筋を伸ばし、臍下丹田に力を入れ、あとはなるべく脱力して過ごしてきたそうです。両手両脚に余計な力を入れず、いまでも何時間ピアノに向かっても疲れないとのこと!

f:id:tanabetan:20210927160637j:plain  高野燿子さん

 

皆さん!緊急事態宣言が緩和され、行動範囲が広がりそうです(もちろん、マスク手洗いなどのセルフケアは継続しつつ)。年長の先輩方を手本に、常に脚を使ってこれからの秋を謳歌しましょう! (T生)

NPO法人新現役ネット (shingeneki.com)

 

#面白い本 「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(加藤陽子著・朝日出版)

~ちょっとリベラルを意識したタイトル以外は、至極まっとうな素晴らしい日本現代史~

この本は、栄光学園の中高校生に、加藤陽子東大教授が出張講義した内容をまとめたノンフィクションです。序章(オリエンテーション)に続いて、日清・日露戦争、第一次世界大戦、満州事変と日中戦争、太平洋戦争をそれぞれ主題とした5日間にわたる講義の模様です。生徒たちも「歴史研究会」のメンバーなので、なかなかレベルの高いやり取りが繰り広げられます。加藤教授は「あとがき」で、この講義は「私が教えた五日間ではなく私が教えられた五日間に他ならない」と述べていますが、これは間違いなく大いなる謙遜というもので、教授の知識量と理論構築力は圧倒的で、生徒が発する鋭い質問や、ときには「けたぐり」のような突飛な発想に対しても決して話をそらさず、正面から受け止め、歴史的事実をもとに丁寧な説明に努めていきます。こうした圧倒的学力を持つ教師との授業を経験した中高生が、今後「歴史」「学問」少し大袈裟に云えば「人生」にどう向き合っていくのか、そのような興味さえ覚えた程でした。

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加藤先生の講義は、中高校生相手といっても決して手を抜いていません。数字やデータを用いた科学的解析や最新の研究成果も披瀝し、出典もきちんと明示します。何より魅力的なのが、豊富な歴史的エピソードの数々です。大東亜戦争前の御前会議で、軍部が「大坂冬の陣」や「桶狭間の戦い」を例にとり、天皇の説得に努めたそうですが、今の歴史教育は余りにも「暗記科目」に特化しすぎ、歴史の持つ「物語性」が軽視されすぎているのでは、と感じました。第一次世界大戦後のパリ和平会議の条りで、松岡洋右が牧野伸顕にあてた手紙が紹介されます。日本が中国に突きつけた二十一条を批判した内容です。松岡のイメージとは違いますよね。その後、国際連盟脱退時の首席全権となった彼の悲劇的な立場など、松岡洋右の知らなかった側面をこの本で学びました。

その他、なぜロシア革命後の指導者がトロツキーでなくスターリンになったのか、日本が国際連盟脱退に至った原因は、通常作戦であったはずの「熱河省侵攻作戦」にあったこと、汪兆銘や水野広徳の新たな側面等。目から鱗が落ちるようなエピソードが、しかも検証された事実として次々と語られていきます。「歴史に"if"は禁物」と云われていますが、もしこうなっていたら……、という限りない想像が広がっていきます。

f:id:tanabetan:20210926191314j:plain ←加藤先生と受講生(2008年)

加藤教授は、昨年の日本学術会議新会員候補の中で任命拒否された6名の中の一人です。日本学術会議会員が、学者のキャリアにどの様な影響を与えるのか、よくわかりません。しかし、このように優れた歴史家が否定されるような決定が何故なされたのか、全く理解できません。(T生)

NPO法人新現役ネット (shingeneki.com)

 

 

現場から見た世界情勢セミナー「次世代に託す日韓関係」を開催して

教育分野における社会貢献活動を行なっている三菱商事OB・OGグループ「一月
会」の協力を得て2019年9月から毎月開催している世界情勢セミナーは、コロナ
により一時中断していたが、今年4月に再開し今回で11回目となった。
今回(9月15日)は、戦後最悪と見方もある日韓関係について、三菱商事OB
お二方を迎えて講演していただいた。
お二方とも、海外駐在経験が豊富で、それぞれ元日韓経済協会専務理事(現顧
問)元韓国三菱商事社長として両国関係の発展に貢献されている。元韓国
三菱商事社長は、2016年に赴任し今年の4月に帰国されたばかりで、日韓関係
悪化前後の韓国社会の空気を体感されているので大変興味深かった。 
 
セミナーは、日韓経済・人材・文化交流の具体的事例紹介(例えば、東日本大
災や熊本地震における韓国からの支援、在韓日系企業おける韓国学生の体験
実習受け入れ、両国青少年交流、インドネシアやモンゴルなど第三国における
日韓企業連携による事業参加など)から始まり、韓国駐在や人的交流を通じて
体感した韓国人の歴史観、価値観やこれらのにおける世代間ギャップ、更に
は、日韓関係改善の可能性やそのために両国がどのように向き合っていけばよ
かについてお話ししていただき、大変示唆に富む内容であった。特に、韓国
若い世代は過去にとらわれない柔軟な考えや高いコミュニケーション能力が
り、パワハラ/アルハラ/セクハラに日本人以上に敏感で、儒教に基づく年功
序列社会は過去の話というのは興味深かった。筆者も1980年台に韓国向けビジ
ネスに関わったことがありソウルによく出張したが、当時と較べると今の社会
は相当変化しているようだ。現在のような日韓関係をもたらした両国における
これまでの世代の改善努力が必要であることは勿論であるが過去に縛られな
い未来志向の若い世代が社会の中心になれば、両国関係が改善向けて大きく
前進するのではないだろうか
 
海外に駐在した経験を持ち、現在も駐在国や周辺地域との関りを持つビジネス
マンOB(時には現役の方も参加)の話には、一般のマスコミ報道には出てこな
貴重な話や示唆に富む内容が含まれるため、できるだけ多くの若い世代にも
お伝えできるように努めたい。
 
(事務局:TARO)