昨今の日本の映画産業は好況のようでご同慶の至り。
さりながら、興行成績のベスト5はすべてアニメ映画で相変わらずお子様産業だ。
各地のシネコンもその上映作品の過半はアニメ、大人の映画小屋だった単館上映館も閉館の一途。
加えて、シネマフリックスとやらで巨匠の新作もネットで封切られる。
暗転と共に異世界に誘われる「お楽しみはこれからだ!」の世界はもう過去のものとなりつつある。老いたるシネフリークとしては淋しい限り。
さて、まもなくキネマ旬報の年間ベストテンが発表される。
昨年日本で公開された多くの映画たちの中の出色の2作品をご紹介しよう。
先ずは大人たちの間の口コミで大ヒットした日本映画「新聞記者」。
現在進行形の政治の汚れに真正面から挑んだ勇気溢れる政治サスペンスだ。多少ベタなところには目をつぶって、民主主義への冷笑に満ちた現代政治に一石を投じたその映画的勇猛さに拍手!
もう一本は、これも予想を裏切って思いがけない大ヒットとなったアメリカ映画「ジョーカー」。
アメコミ古典「バットマン」の敵役ジョーカーを主役に据えた狂気の映画。
コミックの世界ではなく現実社会に身を置く一人の青年が、地獄のような孤独と極貧の中で人間性を崩壊されて極悪人に変貌していく。
主役を演じたホワキン・フェニックスはオスカー主演男優賞当確。
それにしても、かくも暗くて陰惨な映画が大ヒットする今の日本がいささか心配。
さて、余命短きわが映画人生で今年はどんな映画たちに逢えるか、楽しみにしたい。
<キネマスキーのプロフィール>
年齢・国籍不詳。「単館荒らしのキネマスキー」を自称し、余り世上に上らぬマイナーでおタクな映画世界の徘徊者。8年ほど前から、NPO法人新現役ネットの映画講座「シネマの迷宮」を主宰。
*新現役ネット映画サロン<シネマの迷宮 この映画知ってる?>
日時:毎月第一土曜日 13:30~
場所:NPO法人新現役ネット田町会議室(JR田町駅 三田口至近)
お問い合わせ:03-5730-0161