新現役!シニアわくわくブログ

シニアに役立つ情報や新現役ネットの活動について発信していきます。

先週の新聞書評欄から

 土曜日からいつの間にか日曜日に移ってしまった、新聞各紙の新刊書書評欄。本好きにとっては、新刊書購入の手引きとなる格好の情報源です。

書評欄は各紙とも似通っていて、①書評委員の先生方が書く書評 ②担当記者が書く書評乃至紹介記事 ③著者へのインタビューやエッセイ など から構成されています。私は日経新聞の書評欄をメインに、時々産経や読売の書評欄ものぞきますが、全紙の書評欄に漏れなく目を通しておられる方は少ないでしょう。日経新聞に目を通す機会が少ない方を対象に、先週7日の日経新聞書評欄を概観してみました。

 この日の書評委員による書評は5本。経営・芸術・文学・科学・社会と、幅広い目配りです。この中で私が面白いと思ったのは「動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか」(ヴァール著・柴田裕之訳・紀伊国屋書店)。書評は長谷川眞理子総合研究大学院学長。ねじ回しの使い方を習得し、檻のボルトを外して脱走するオランウータン、膨大に拾得した木の実を複数個所に隠し、その場所を正確に記憶しているカラス。こうした動物の認知能力など、動物の内的な世界を私たちは理解できるのだろうか。神が創りたもうた人間とその他動物を峻別し、差別する西欧文化の考え方に対するアンチテーゼでもあるらしい本書は、尾を振っているイヌが本当に喜んでいるのだろうか、と漠然と考えていた私の疑問に応えてくれそうな期待を抱かせます。読んだ気になるほどその本の内容がわかって、しかも買ってちゃんと読んでみようという気にさせる。これぞまさに書評委員のテクニックなのでしょう。

 小説では「湖畔荘(上・下)」(モートン著・青木純子訳・東京創元社)。出版社から推測できるようにミステリー長編小説ですが、翻訳家の鴻巣友季子氏が書いた書評の冒頭「ismと付く大作家、トルストイ(トルストイズム)?カフカイズム? この小説の著者、モートンは『モートイズム』という言葉が使えるほど、独自の作風を持ったミステリー作家だ」を読んだだけで俄然興味津々になりました。この説得力、恐るべしです。

 明治以降、戦争や暴動といった人為的被害や地震・洪水といった自然災害から、帝都東京はどのように守られてきたかを著述・分析した「帝都防衛」(土田宏成著・吉川弘文館)、ジョブ(用事・仕事)をテーマにイノベーション論を展開する「ジョブ理論」(クリステンセン他著・依田光江訳・ハーパーコリンズ・ジャパン)にも興味をそそられました。

 10月7日の日経新聞書評は私にとって大豊作。大いに楽しませてくれました。(ターサン)